2014.1.12

めちゃめちゃ感動できるもんを見つけて自慢せえ
倉本美津留/放送作家・ミュージシャン

大人の世界のこととか、ちょっとエッチなこととか、全部『悪名』で学んだ気がします

― 今回は、人と映画というテーマで、色々とお話をお伺いさせて下さい。まずは、ジャンル的にはどういう映画が好みなんですか?

倉本:テンションが上がるので、SFは好きです。
人が想像力で生み出した存在しないものに対して、リアリティを感じたときに、すごく喜びを感じるというか。それは自分がありもしないようなことを思っている妄想と一致してたりするんですよね。 “やっぱりそう思っていたのか!”みたいな。『アンダルシアの犬』(※ルイス・ブニュエル監督作品、サルバドール・ダリが共同で脚本を執筆)という作品が好きなんですけど、ダリの作品が気になるのって、そういう嬉しさがあるからなんでしょうね。自分もやっぱり笑いを作っていく中で、シュルレアリスムっていうのはすごく重要視してます。全然関係ないものを並べて置いたら、不思議な感じになるっていうのがあるじゃないですか。“何?!この違和感!”って。夢の中で見た景色とか体験って、夢を見ている時は不思議じゃないのに、起きたら不思議ですよね。そういう感じとかが大好きなんです。

― それは小さい頃からの感覚ですか?

倉本:映画ではないんですけど、子どもの時に衝撃を受けたのが、マンガの『ねじ式』(※つげ義春作品、「ガロ」に掲載)なんですよ。小学校一年生の時に『ねじ式』の初版本を見て、超現実を感じたし、すごく衝撃を受けたんです。

― 6歳ですごいところから入りましたね(笑)。

倉本:そこから入ってますね。だから自分が作る笑いなんかにも、その感覚が思いっきり反映されています。

― 相当とんがった小学生ですよね。もう、皆とはちょっと感覚が違いますよねえ。

倉本:みんなの事を煽動してましたね(笑)。
人にいろいろと、“これええぞ~”とか“あれええぞ~”とか言って。

― 生徒会とかクラス委員とかではないんだけど、プライベートでは すごい一目置かれている人って、クラスに必ずいるじゃないですか。そういう感じですか?

倉本:いや、やっぱりメジャーというキーワードは絶対なんですよ。“おかしな奴が学級委員になって、クラス全体をおかしくするんや!”みたいな感じで頑張るタイプなんです(笑)。一部の人間だけがおもろい、とかは嫌なんですよ。頭おかしいままメジャーを目指したいんです。

― それでは、最初に衝撃を受けた映画は何ですか?

倉本:親父がよく観ていた、『悪名』(※勝新太郎主演の映画)が大好きでした。大人になって観ても、やっぱり分かるわ~っていう。こないだ仕事がらみで、『悪名』シリーズを観直したんですよ。シリーズで全16作あるんですけど、途中ぐらいの作品は軽いタッチだし、どれもめちゃくちゃ面白いんですよ。第一作の『悪名』は言わずもがなですが。もうボクの原点はここやな~って、改めて思いましたね。大人の世界のこととか、ちょっとエッチなこととか、全部『悪名』で学んだ気がします。

出くわしてみて感じるっていう事は大事やなあと

― 最近は、どんな時にどんな目的で、映画を選んで観られるんですか?

倉本:ありがたい事に、たくさん試写の招待状をいただくんです。
それで行ける時は、出来るだけ行こうと思ってます。自分の好みに関係なく、とにかく出くわしてみて感じるっていう事は大事やなあと思っているんで。

― 出くわしたいっていう衝動ですね。

倉本:そうですね。出くわしたいっていう性分がありますね~。
旅もそうですけど、自分から行ってみたい所っていうのが、そんなになくって。誰かに誘われて、“なら行こか!キミが行きたいんやったら行こ”って(笑)。旅先での“だから来たんや!”っていう発見や偶然がすごく嬉しいんです。答えがない時はないんですよ。
自分で行き先を決めないっていう人生になっているんです。

― “出くわす”って、いい言葉ですねえ。旅もそうだし、映画や音楽も、本だって人の頭の中に出くわしていくという・・

倉本:そういう意味で、原宿シネマはいい企画ですよね。色々な映画に出くわせますもんね。

― ありがとうございます。やっぱり出くわすとか、出会っちゃう感じとか、ぶつかっちゃう感じを体感出来る場を作っていければなと思っています。

倉本:そうですよ。今日、倉本美津留が館長の原宿シネマに半信半疑で来たけど、やっぱり来てよかったなあと思って帰る人もおると思うし。僕が出くわす側になった時には、そういうのが嬉しいので、僕と出くわす人間には、良い出くわせた感を体験して欲しいなあ、という想いはすごくありますね。

ボクはやっぱり人をビックリさせたいんですよね

― 放送作家でありミュージシャンでもある今の倉本さんですが、そこまでに至るきっかけや出会いを他にもあれば教えてください。

倉本:いつも言っているのは、やっぱりビートルズですね。ビートルズのやった事って、音楽・映画・ファッション・思想と、何もかもあるじゃないですか。小学校五年生の時にビートルズの事をはっきりと認識した時に、“あぁ、俺にも出来るんや”って何だか思い込んじゃったんです。ビートルズって、ファンタジーとリアルの間を追及してたと思うんですよ。その部分を繋げたからこそ、あれだけすごくなったんじゃないかと。

― しかもそこをメジャーシーンで、裏をかいてやるっていう。

倉本:そうそう、それが理想なんですよね。

― そういう志を持って、倉本さんも自分のフィールドでやるっていうスタンスなんですね。

倉本:そうですね。ビートルズは、当然突き詰めたものは音楽ですけども、音楽以外のジャンルにおいても、誰も開けた事のないふたを全部開けていった。開ける人がいない時代にどんどん開けていった。これはどんな仕事にも当てはまることだなと。ビートルズも開けていないふたを見つけて開けていくのが、放送作家としてのボクの仕事です。

― 出会いって話に戻すと、ものの見方や表現に関して、あまりにも大きい出会いだったんですかね?

倉本:そうですね。音楽だけではなく映画においても、その都度、革命を起こしていっていますし、ビートルズはやっぱり大きな出会いでした。ビートルズの音楽映画もよく観ていました。

― ちょっと仕事論みたいになってしまうんですが、色々なテレビ番組やコントなどの作品づくりに携わっている時、観る人たちに向けて、どのような気持ちを込めてお仕事をされていますか?

倉本:ボクはやっぱり人をビックリさせたいんですよね。“何これ!”って。“えっ、知らんかった!この感覚!”ってビックリを体験してもらいたいんです。

― そのビックリさせたい感覚というのは、衝撃と高揚感を与えたいというような事ですか?

倉本:そうですね。しかも、それがそこだけで終わるものじゃなくて、その人が次に何かをやっちゃうってところまで繋げたいんです。
おかしな人間が増えて、それがメジャーになったらええなって。

自分の好きなものを人に見せるのって、実は覚悟がいる

― では最後に。人生に影響を与えるような自分の一本とか自分の一曲とかが無かったり、出会ったりする体験をまだしてない人が山ほどいると思うんですよ。そういう世代の方々に一言頂けますか。

倉本:こっそりと探して、めちゃめちゃ感動できる作品を見つけてみんなに自慢せえと。友達に“これおもろいで!”ってすすめられる一本をもつ。これだけ誰でもどこでも何でも簡単に観られるような世の中になっているだけに、おススメする快感はあるぞって思います。

― そうするとモノの見方や吟味の仕方とかが、ちょっと違ってきま すよね。

倉本:そう思います。ボク、原宿シネマの館長をお願いされた時、これはちゃんとせな、って思いましたもん。これでボクがどんな人格かっていうのも量られるしなって。自分の好きなものを人に見せるのって、実は覚悟がいることなんですよね。それがおもんなかったら“何や、こいつ思ってた程おもろい奴やなかったんや”みたいな。普段の仕事でもそうですが、観た人間が出来るだけ満足するように、責任をもってやらなあかんと思うんで。

(終)

倉本美津留(放送作家・ミュージシャン)

放送作家。「ダウンタウンDX」Eテレのこども番組「シャキーン!」ひかりTV「初音ミクのミクミクメイクミク!」などを手がける。これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「M-1グランプリ」「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」他。「一人ごっつ」では大仏として声の出演も。近著にことば絵本「明日のカルタ」(日本図書センター)、「ビートル頭(読み:ズ)」(主婦の友社)がある。
また、ミュージシャンとしても活動。2008年、アルバム『躾』をビクターエンタテインメントよりリリース。ユニット"YOUに美津留"で『月』をNHKみんなのうたに発表。2013年11月20日には空気公団とのユニット"くうきにみつる"としてのファーストミニアルバム「はにほへといろは」をリリース。

倉本さん おススメの名作


  • 『悪名』

  • 『アンダルシアの犬』

  • 『ねじ式』(マンガ)