2014.2.28

動けば絶対に何かが見つかると思うんですよね
森本千絵/コミュニケーションディレクター

小さい時から何かをつくって遊んでいた

― 森本さんは青森県三沢のご出身ということですが、幼少期はどのように過ごされていたのですか?

森本:家の前に草原が広がっている、おじいちゃんとおばあちゃんの所に預けられていました。そこでテントウムシをたくさん捕まえては、おじいちゃんの帽子の中に集めておいて、おじいちゃんがその帽子を被った時に“ギャー”ってなるイタズラをしたり、自由に遊ばせてもらっていました(笑)。日中は、おじいちゃんが米軍基地の中でテーラーを営んでいたので、そこによく遊びに行っていていました。だから、お絵かきを最初にやったのはクレヨンではなく、洋服を作る際に使う、布に線をひく三角のテーラーチョークでした。あと、足踏みミシンの後ろに布の切れ端がたくさん落ちていたので、そういうのを結んだりしていましたね。

― 何かを作っていたんですかね?

森本:そうですね。布切りバサミなんかもあったので、小さい時から何かをつくって遊んでいたんだと思います。それと、そこには色んなアメリカ人家族も来ていたので、そこに預けられていたりもしていました。一方、そこにいる日本人は凄い青森訛りだったので、日本なのか外国なのか、よく分からない状況で育っていたと思います。

― すごい所で育ったんですね。

森本:最近、三沢に行ったら、もうそのお店はないし、皆さん引っ越していたりで閑散としていて、シャッター街のようになっていました。昔はもっと外国の方がたくさん来ていた時で、すごい栄えていたんですよね。商店街はピンクとかのカラフルな英語の看板があって、アメリカのポスターも貼ってあったりして、すごい楽しい場所だったんですけど、今は少し寂しい感じでした。

― 映画館も当時は、何か違う感じだったんですか?

森本:映画館というか、皆で映画を観る場所が基地の中にあって、そこで基地の人達と一緒に映画を観る体験をしたのを覚えています。

― 一番最初に観た映画、もしくは一番最初に衝撃を受けた映画っていうのは覚えていますか?

森本:チャップリンの『ライムライト』ですね。うちのおじいちゃんは、チャップリンが大好きだったんですよ。だから、チャップリンの映画は、お店でしょっちゅう流れていたのでよく観ていました。小さいながら、喋らない映画だなと思って。でも、マンガの延長みたいで観ていて楽しかったから、ずっと観ていたなぁ。それだから、大人になっておじいちゃんが死んだ後に、『チャーリー』っていうチャップリンの伝記映画を観た時は、幼少期を思い出して、もう嗚咽するくらい号泣しました。あと小さい時に観て覚えているのは、『サウンド・オブ・ミュージック』や『雨に唄えば』、『幸福の黄色いハンカチ』。小さい時の私にとって、音楽と映画は切り離せなくて、ミュージカルで歌っているシーンは好きでしたね。ミュージカルもおじいちゃんが好きでよく観ていたので、その影響です。テーラーはツヤツヤの床だったんですけど、おじいちゃんはその床の上で、『雨に唄えば』の唄っているシーンを鼻唄まじりに踊りながらマネしていたりしました。

― すごいハイカラな方だったんですね。では小さい時は、おじいちゃんの影響で割と洋画を観ていたんですね。

森本:そうですね。でも、そのあとは『蒲田行進曲』や『里美八犬伝』を観ていたのを覚えています。あとは、伊丹十三監督の作品を観ては、幼心にドキドキしていましたね。とくに「お葬式」は大好きです。それからもう少したって、高校二年生の頃には、単館に通っていました。あの頃はたくさん映画館があって、学校帰りによく行ってましたね。ときには、ポルノに近いものを見たこともありましたよ(笑)。

― それはまたギリギリな感じですね。

森本:私が当時観ていた作品は、比較的に爽やかの方でした。これは全然エロくないみたいな(笑)。

― 『サウンド・オブ・ミュージック』の頃から、どうやってそこにたどり着いたんですか?その間の小学校高学年~中学生の頃は、どういった作品を観ていたんですか?

森本:『ザナドゥ』とか『ゴーストバスターズ』は、学校のダンスに取り入れたりしていたんでよく覚えてます。
そして新宿でポルノに近いものや寺山修司などを観ている時期から、一気にタランティーノみたいな(笑)。世界には、『ゴーストバスターズ』や『E.T.』のような感じの映画だけでなく、色々あるらしいと。バイオレンスなシーンとかでパンチを食らって、音楽もカッコいい~って。

― 森本さんはサントラがお好きなようですね。

森本:そうなんですよね。そもそも私はサントラが大好きで、映画とサントラどっちが好きかってなったら、サントラが好きなくらいで。観てない映画でも、まずサントラから買う場合があって、そうすると勝手に話をつくれるんですよね(笑)。大学生から大人になると、サントラを聞きながら、オープニングのシーンはこうかなとか、タイトルはこうゆう風に出るんだろうなとか、車で走っているシーンはこうかなとか、音楽を聴いてると映像が出てきちゃうんですよね。

― すごい感覚人ですよね。

森本:いやいや、そんなことはないと思うんですけど(笑)。いつも先に何か思い浮かんで、それに理屈をつけているんですけど。まあ、言葉はあとからついてくるという感じですかね。

『イントゥ・ザ・ワイルド』にはガツンときて、アラスカに行っちゃいました(笑)

― 今映像に関わるお仕事をされていますが、それに影響を与えた一本とか、キッカケになった作品ってありますか?

森本:えーと、それはもう名監督と呼ばれる方々の作品全部ですよね。山田洋次監督の作品をはじめ、小津安二郎監督や黒澤明監督の作品とか。もう選べないです。

― それを強いて一本に絞るとすると?

森本:うーん、やっぱり『ライムライト』ですね!小さい時に観て、とにかくビックリしたんですよね。あと、おじいちゃんがチャーリーって呼ばれていたんですよ。お店の名前が「チャーリーテーラー」という名前だったので。

― それはもう筋金入りじゃないですか(笑)。

森本:今思うと確かにそうですね(笑)。おじいちゃんの事をチャーリーって呼んだりしてたし。なんかチャップリンの映画を観ているとキュンってなるんですよね。
今仕事でCMとかをつくってますけど、セリフ回しがあるものとかって私には出来ないんですよね。私は良くも悪くもなんですけど、セリフとかではなくて、表情で表現するとか情景をワンシーンで説明するとか、そうゆう手法になっちゃいますね。CMから映画に進むような方たちがやってきたようなCMシリーズは、実は撮れていないんですよ。ミュージシャンのPVというより、サントラのPVがつくりたいと言うか。サントラを先につくってもらって、それにPVのような映像をつくったら映画になるのかな、とか考えてましたもん。映画のセリフまでは出来ないし、物語として起承転結をつけたりも出来ないんで。かといって文字だけの斬新な映画というか、そのアートみたいなのも嫌だし。ただ、映画とPVの間のサントラ映画みたいなものは作れるような気がします(笑)。

― 映画の1時間半とか2時間の構成って理性的だと思うんですけど、森本さんはもっと感覚人だから、セリフ回しとかで表現するというよりは、もっとダイレクトな表現でやった方があっているのかもしれませんね。

森本:例えば『ファーゴ』や『キッチンストーリー』でもあるシーンなんだけど、たまに入ってくる画だけのインサートシーンってあるじゃないですか。是枝監督の『歩いても歩いても』だと、人物の頭越しから急にカーテンが風に揺れるシーンだったり。あと是枝監督の「そして父になる」でも、車が長い道をビューって走って行くワンカットがあるんだけど、もうそこだけで主人公の前後を感じるような瞬間のシーンがあって、そこだけやりたい(笑)。ホントにそこだけ発注して欲しいな。

― すごいわがままな要望じゃないですか(笑)。ちなみに最近は、どんな映画を好んで観るんですか?

森本:最近は、『イントゥ・ザ・ワイルド』のような冒険ものや旅ものですかね。やっと、淡々とした映画が観れるようになってきたかな。そういうの男の人達は好きですけど、分からなかったんですよね。『イントゥ・ザ・ワイルド』にはガツンときて、アラスカに行っちゃいました(笑)。それで無人島でキャンプしたりなんかして、変な鳴き声とか聞いてました。あとは、サーフィンを始めたので、サーフィンものは全部観る。あと「わたしはロランス」。水彩のように紡いでいく映像美に鳥肌がたちました。久しぶりに監督の伝えたいという想いを強く感じた。

― 最近、サーフィン映画は何か観ましたか?

森本:この間は片腕をなくしちゃったカウアイ島の子の話、『ソウルサーファー』を観ました。ああいうタイプの映画は何にせよ、朝一の人があまりいない時に行って、一番前の席でスクリーンを大きく感じながら、“うわー、海行きたーい、でも行けないー”って思いながら観るんですよ、ただそれだけ(笑)。

― 以外と好きなジャンル多いですよね?

森本:そうですね。寅さんも再燃しちゃいましたしね。ちなみに音楽もそうなんですよ。

景色が動くとアイディアを思いつく

― 映画や音楽、アートや本、旅、人など色々と毎日出会うと思いますが、最近で印象に残っている出会いは何かありますか?

森本:出会いかは分かりませんが、ストックホルムの火葬場がすごい良かったです!一つ一つのお墓に土があって、そこにそれぞれ色々な種を蒔くんですよ。だから、ラベンダーがバァーって咲いてる所もあれば、バラが咲いている所もあって、火葬だから怖くもないし、それぞれの場所にキッチンマット位のガーデンがあって、そこに故人の好きだった花が育っているんですよね。それで庭師もいるし、しかもゴルフ場くらい広大な場所なんですよ。

― センスいいですね。

森本:そうなんですよ!センスが良くて、確実に死んだ人と会い続けられる場所になっているというか、来てる人が皆ニコニコしているんですよね。そこを歩いていると、そのお墓の人がどんな人だったか、何となく見えるんですよ。グリーン一色でシンプルな人もいるし、蔦だけの人がいたり、もう素晴らしくて!何というか、死んだ人との付き合い方の考え方が違うなと思いましたね。日本は、モノをデザインする事を必死に考えるけど、やっぱりモノよりコトというか。死んだ人とどうやって生きていくかを考えるコトとか、悲しむコトとか喜ぶコトとか、そこをちゃんとデザイン出来ている国は凄いなと思いましたね。

― では最後に。人生に影響を与えるような自分の一本とか自分の一曲とかが無かったり、出会ったりする体験をまだしてない人が山ほどいると思うんですよ。そういう世代の方々に、一言頂けますか。

森本:見つけるのは難しいし、見つけようと思わなくても、動けば絶対に何かが見つかると思うんですよ。私は車窓の風景が好きなんですけど、景色が動くとアイディアを思いつくというか、追いかけてきてくれる気がするんですよね。なので、まずは動け!ってことですかね。

(終)

森本千絵(コミュニケーションディレクター

1976年、青森県三沢市生まれ。祖父の仕事場のあった三沢基地付近で幼少期を過ごす。祖父の仕事場(仕立屋)で、布とはさみを使いコラージュ作りをはじめる。1999年武蔵野美術大学卒業後、博報堂入社。2007年独立、goen°設立。最近では、「組曲」などの企業広告や、動物園のディレクション、保育園の内装、CanonカメラEOS Mのコンセプト&カラーデザインを手掛けるなど多方面で活躍。
http://www.goen-goen.co.jp

森本さん おススメの名作


  • 『ライムライト』

  • 『キッチンストーリー』

  • 『イントゥ・ザ・ワイルド』

  • 『リトルミスサンシャイン』